ソ・ラ・ノ・ヲ・ト
ソ・ラ・ノ・ヲ・ト 1話 『響ク音・払暁ノ街』 感想 - モノクロ色の絶望と色付く世界 -

音は響く。音は響いて、そして伝わる―
アバンからOP、そこから町へ。そして、色鮮やかな風景との出会いに砦への着任と、リズミカルに、そして深々と物語へ視聴者を誘うこの流れの良さはまさに素晴らしいとしか言いようがないほどに、観ていて心地良く、この世界観に自然と惹き込まれてしまうほどの美しさをこの作品は形成していますね。
また彼女が辿るその旅路の過程と、モノローグ的に語られる町の伝説が相まって独特の雰囲気をも醸し出していて。けれど、それ以上に予見される明るく温かな未来への展望が何よりも空深彼方の存在を際立たせていて、これから始まる彼女たちの物語に対しては大きな期待感をついつい抱かせられてしまいます。


また、アバンで描かれた終末的な空気感から、終盤の世界の夜明け的な空気感への変遷の描き方は、本当に素敵過ぎて身震いをしてしまうほどです。
特に、アバンのモノクロ表現を用いたカナタの心象風景の描き方が面白くて、彼女にだけ色を与えるシーンと彼女だけが色を与えられていないシーンの連続がより彼女自身の孤独感を強烈に描き出していて、巧く彼女だけが抱く絶望そのものを表現しているように感じられます。


この手の手法は 『夢喰いメリー』 の1話や、『喰霊-零-』 の3話においても同様の表現方法が使われていて、前者では現(うつつ)に来てしまったまま帰れなくなり孤独だったメリーの心情を、後者は母を亡くし心の拠り所を失くしてしまった神楽の心情を克明に描き出しています。
また、『魔法少女まどか★マギカ』 においても、美樹さやかが魔女化に至るまでの過程(電車内でのシーン)で同じモノクロ表現が使われていたりしますね。(参考:魔法少女まどか★マギカ8話感想)
他にも探してみれば多くの作品でこの表現方法は使われているかも知れません。

けれど、そんなカナタの前に一人の女性の姿が映し出されます。背景がモノクロなことからこのカットは彼女の目線(色付いているのが彼女)だということが分かり、つまりは彼女の中の絶望に一筋の光が差したのではと捉えることが出来るわけです。もしくは控え目な言い方をすれば “興味を抱くことの出来る存在” とも言えますね。
とにもかくにも、この金髪の女性が彼女の救いになることを示唆している場面なのだと。


そして、今度はその色がラッパへと移り、カナタの興味の対象の変遷が場面の切り替わりと共に上手く示されているのが分かります。
彼女の回想はここで終わってしまうわけですが、その後にもう1度入る同じ場面からの回想も含め、これらのシーンだけで彼女の心を支配していた絶望が段々と薄れていくその段階がよく読み取れますね。また、金髪の女性の存在(あの音の存在)がカナタの支えそのものであることも明確に記されています。
彼女の姿とカナタの姿をダブらせる演出も見事で、この作品の 『音は響いて、そして伝わる―』 というテーマ性をも鮮明に描き出していて凄く気持ちいい上に、個人的にもこういう演出には本当に弱いですね。観ているだけで色々な想いに駆られてしまいます。


そして、成長したカナタの姿と、色鮮やかに美しく描かれた世界。また澄み渡る空の風景へと場面は切り替わり、ここでもその希望に満ち満ちた世界観を見事に提示してくれる辺りは、心の底からいいなぁと思える作品に仕上がっているように感じられます。
加えて、着任早々張り切って道を指し示し迷いなく進む彼女の姿が、一人で蹲っていた “あの頃” から “ここまで” の空白の期間を想起させてくれるようで、実に温かく真っ直ぐな印象を視聴者に与えてくれますね。彼女の確固たる信念とその性格の源泉というのはこの時点で読み取れたものなんだなぁ、と考えると改めてこの作品の良さには唸らされてしまいます。
また、あのリオの鈴に対する執着心などを考慮して考えればより、彼女の性格などは見えてくるのではないかなとも思えるところです。


さらに、『色付く』 という視点から観ればあの水掛け祭においても、もしかしたら同様の意味合いが含まれているのかも知れませんね。
誰かに影響され、誰かに影響を与える存在。そうして色付け合うことで、人はどこまでも笑っていられるし、成長し合える。それらはまさしく、あの金髪の女性とカナタの関係性に言い当て嵌めることのできる言葉なわけですが、こういった老若男女問わずして色を掛け合うシーンを観ているとどうしてもそんなことを想起させられてしまいます。
特にこの作品は1話の時点だけでも多くの子供を登場させているように感じるわけで、それもまた未来への希望の象徴としての暗示に成り得ているのかも知れないな、なんていう風に考えるとよりこの作品に対する見識というのは変わってくるのではないかなと思えるとところ。節々で感じられる不安よりも、そういった温かさに目線を移して視聴していけたらよりその良さを感じられる作品なのではないかなと思えますね。

そして、終盤。ある意味、モノクロと同じような意味合いを含む夜中(暗闇)のシーンだったわけですが、そこからリオが起床ラッパを吹き鳴らすことで、日の出と共に辺り一面の世界がその光を浴びて色付いていくこの演出は本当に素晴らしいの一言。
まさにあの金髪の女性が吹き鳴らした音を聞き、世界観を広げることが出来たカナタ自身のその心情ともリンクされる場面として描かれていましたね。色を帯びていく背景と、光を受け輝かしくもまだまだ未熟に映し出せれるカナタの姿は相反しているようで、どこか同じように感じられるのは “これから” の期待感も含んだものなのかなとも考えると、余計に今後の展開に対しても期待で胸が膨らんでしまいます。
未来に対しての暗い要素より、未来に対しての明るい要素がより多く散りばめられたこの初回だったわけですが、とにかく今は彼女たちのこれからを温かく見守っていきたいなと思いますし、そう思わせてくれるこの作品には感謝をしながらこれからもじっくり視聴していきたいなと思います。本当に素敵な1話でした。
次回 「初陣・椅子ノ話」
また彼女が辿るその旅路の過程と、モノローグ的に語られる町の伝説が相まって独特の雰囲気をも醸し出していて。けれど、それ以上に予見される明るく温かな未来への展望が何よりも空深彼方の存在を際立たせていて、これから始まる彼女たちの物語に対しては大きな期待感をついつい抱かせられてしまいます。


また、アバンで描かれた終末的な空気感から、終盤の世界の夜明け的な空気感への変遷の描き方は、本当に素敵過ぎて身震いをしてしまうほどです。
特に、アバンのモノクロ表現を用いたカナタの心象風景の描き方が面白くて、彼女にだけ色を与えるシーンと彼女だけが色を与えられていないシーンの連続がより彼女自身の孤独感を強烈に描き出していて、巧く彼女だけが抱く絶望そのものを表現しているように感じられます。


この手の手法は 『夢喰いメリー』 の1話や、『喰霊-零-』 の3話においても同様の表現方法が使われていて、前者では現(うつつ)に来てしまったまま帰れなくなり孤独だったメリーの心情を、後者は母を亡くし心の拠り所を失くしてしまった神楽の心情を克明に描き出しています。
また、『魔法少女まどか★マギカ』 においても、美樹さやかが魔女化に至るまでの過程(電車内でのシーン)で同じモノクロ表現が使われていたりしますね。(参考:魔法少女まどか★マギカ8話感想)
他にも探してみれば多くの作品でこの表現方法は使われているかも知れません。

けれど、そんなカナタの前に一人の女性の姿が映し出されます。背景がモノクロなことからこのカットは彼女の目線(色付いているのが彼女)だということが分かり、つまりは彼女の中の絶望に一筋の光が差したのではと捉えることが出来るわけです。もしくは控え目な言い方をすれば “興味を抱くことの出来る存在” とも言えますね。
とにもかくにも、この金髪の女性が彼女の救いになることを示唆している場面なのだと。


そして、今度はその色がラッパへと移り、カナタの興味の対象の変遷が場面の切り替わりと共に上手く示されているのが分かります。
彼女の回想はここで終わってしまうわけですが、その後にもう1度入る同じ場面からの回想も含め、これらのシーンだけで彼女の心を支配していた絶望が段々と薄れていくその段階がよく読み取れますね。また、金髪の女性の存在(あの音の存在)がカナタの支えそのものであることも明確に記されています。
彼女の姿とカナタの姿をダブらせる演出も見事で、この作品の 『音は響いて、そして伝わる―』 というテーマ性をも鮮明に描き出していて凄く気持ちいい上に、個人的にもこういう演出には本当に弱いですね。観ているだけで色々な想いに駆られてしまいます。


そして、成長したカナタの姿と、色鮮やかに美しく描かれた世界。また澄み渡る空の風景へと場面は切り替わり、ここでもその希望に満ち満ちた世界観を見事に提示してくれる辺りは、心の底からいいなぁと思える作品に仕上がっているように感じられます。
加えて、着任早々張り切って道を指し示し迷いなく進む彼女の姿が、一人で蹲っていた “あの頃” から “ここまで” の空白の期間を想起させてくれるようで、実に温かく真っ直ぐな印象を視聴者に与えてくれますね。彼女の確固たる信念とその性格の源泉というのはこの時点で読み取れたものなんだなぁ、と考えると改めてこの作品の良さには唸らされてしまいます。
また、あのリオの鈴に対する執着心などを考慮して考えればより、彼女の性格などは見えてくるのではないかなとも思えるところです。


さらに、『色付く』 という視点から観ればあの水掛け祭においても、もしかしたら同様の意味合いが含まれているのかも知れませんね。
誰かに影響され、誰かに影響を与える存在。そうして色付け合うことで、人はどこまでも笑っていられるし、成長し合える。それらはまさしく、あの金髪の女性とカナタの関係性に言い当て嵌めることのできる言葉なわけですが、こういった老若男女問わずして色を掛け合うシーンを観ているとどうしてもそんなことを想起させられてしまいます。
特にこの作品は1話の時点だけでも多くの子供を登場させているように感じるわけで、それもまた未来への希望の象徴としての暗示に成り得ているのかも知れないな、なんていう風に考えるとよりこの作品に対する見識というのは変わってくるのではないかなと思えるとところ。節々で感じられる不安よりも、そういった温かさに目線を移して視聴していけたらよりその良さを感じられる作品なのではないかなと思えますね。

そして、終盤。ある意味、モノクロと同じような意味合いを含む夜中(暗闇)のシーンだったわけですが、そこからリオが起床ラッパを吹き鳴らすことで、日の出と共に辺り一面の世界がその光を浴びて色付いていくこの演出は本当に素晴らしいの一言。
まさにあの金髪の女性が吹き鳴らした音を聞き、世界観を広げることが出来たカナタ自身のその心情ともリンクされる場面として描かれていましたね。色を帯びていく背景と、光を受け輝かしくもまだまだ未熟に映し出せれるカナタの姿は相反しているようで、どこか同じように感じられるのは “これから” の期待感も含んだものなのかなとも考えると、余計に今後の展開に対しても期待で胸が膨らんでしまいます。
未来に対しての暗い要素より、未来に対しての明るい要素がより多く散りばめられたこの初回だったわけですが、とにかく今は彼女たちのこれからを温かく見守っていきたいなと思いますし、そう思わせてくれるこの作品には感謝をしながらこれからもじっくり視聴していきたいなと思います。本当に素敵な1話でした。
次回 「初陣・椅子ノ話」
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音は響く。音は響いて、そして伝わる―
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