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放浪息子

放浪息子 #01 『おんなのこって なんでできてる? ~Roses are red, violets are blue~』 感想

放浪息子1話 シーン1


安易な言葉では語れない。
でも、語らなければいけない気がした。そんな作品―



完璧だった。全てにおいて完璧。非の打ち所がない初回。
多分、この気持ちを表現する言葉を私は持ち合わせていないと思います。
でもやっぱり・・・それでも語らせて欲しい。

じゃないときっと後悔するから。この気持ちはしっかりと残しておきたいから。
だから自分の精一杯の気持ちで、この作品への思いの丈をぶつけてみようと思います。


 放浪息子1話 シーン2


自分らしくって、一体何なんだろう―


人それぞれの持つ “自分らしさ”。根本的にはそれを貫き通すということは至極全うなことです。
自分らしく生きるのが個性であって、そうやって人は色々な輝きを放っている。
何より自分らしさというのは人に決められるようなことではなくて自分が決めるもの。
主観的に見た時の自分らしさと、客観的に見られた時の自分らしさでは違いが生じることがあるかも知れませんけど、それは明らかに前者の方が自分らしいということであって、人にこうだと押し付けられる “らしさ” なんて既に個性でもなんでもないんですよ。

だからこそ、自分と他人とが思う自分らしさが重なると凄く嬉しい
認められたと思えるから。自分らしく生きていいんだと思えるから。
そういう心理って少なからずあると思います。

けどね。。全ての “自分らしさ” が認めてもらえるようになるとは限らないんですよ。
現実で例えれば、K-1ファイターの長島自演乙雄一郎選手などもそう。
彼はあくまで自分らしさを貫いている。それがあのコスプレでの入場。あれが個性。
けれどそれを認めてくれない人もきっといるはずなんです。いたはずなんです。

今や彼は大スターですからおそらくおおよその人がそれも彼らしさと認めて楽しんでいるのでしょう。
でも彼がまだK-1ファイターとなる前、またはなって間もない頃。
そこには酷くバッシングも浴びせられたに違いない。
だって常識的ではないですからね。普通とは違いますから。
出る杭は打たれるではありませんけど、そういうことって現実的に凄く多いですよ、やっぱり。


そしてこれは二鳥修一の持つ、彼自身が考えている “自分らしさ” においても
同じことが言えるわけなんですよね。


 放浪息子1話 シーン2


彼は何も悪いことはしていない。女装だっていいじゃない、それが彼らしさなのなら。
それを否定することは誰にだって出来ることじゃないしていいことじゃない。
でもそれは綺麗事。現実に目を向けた時、必ずその先には “気持ち悪い” というあの印象が立ちはだかってくる。それが常識外であると社会が、この世界がそう認識してしまっているから。

薔薇は赤、菫は群青という認識が一般的なのにも関わらず、 「薔薇と言えば緑だ!菫と言えば黄色だ!」と言い張る人がいればやはりそれは常識とは違うと思ってしまうのと同じことです。

だからこそ、修一は悩み苦しんでしまうのでしょう。
自分らしく生きているはずなのに、自分らしく振る舞いたいだけのはずなのに、それは何故か常識外。
常識から見れば気持ち悪い。気持ち悪い僕。。中途半端な僕。何で?どうして?

「僕、こんなの嫌なんだ・・・」

そうやって彼は葛藤してしまう。認めてくれないから悩んでしまう。
思春期にありがちで、凄く人間らしいその悩み。そして普通の人の何十倍も重いその悩み。

このこと自体には彼がこれからさらに悩み苦しんで泣いて、喚いて、時には笑いながらその悩みを除きとる方法を自身で見つけてくことでしょうから、今はこうするべきとは言えません。
むしろ簡単にこうするべきだなどということは無責任ですから。
卑怯かも知れませんが私にはそういう模範解答的なものは今のところ提示できません。

でもこれだけは言えるし分かります。


 放浪息子1話 シーン3


それは、彼にはそんな常識外の彼らしさをしっかりと常識的に認めてくれる仲間がいるということ。
悩みを共有して、一緒になって考えてくれて、時には守ってくれる友達がいる。
それだけでも彼は恵まれているんですよね。そしてそのことに彼は気付くべきなのでしょう。
いや、もう既に気付いてるのかも知れませんね。だったらそのことを大切に胸に刻むこと。
そして彼らを心から信頼して信じること。

それがきっと彼自身が “自分らしさ” をしっかりと持つための第一歩になるのだと思います。

何より信じられれば、その相手も必ず信じてくれる。助けてくれる。
まるで性善説のような物言いですけど、私はそう思います。

先程、「薔薇と言えば緑と言い張る人、菫と言えば黄色だと言い張る人は常識的でない」 と述べました。確かにそうかも知れないけど、でも実際にはそういう色の薔薇や菫も存在するんですよね。

常識的じゃないと思うのはそのことをただその人が知らないだけ。
男の子は男らしく、女の子は女らしく。
それが常識的な考え方なわけですけどそうじゃないこともまた然り。

彼がその自分らしさをしっかりと貫いて行けば、自ずとそれが常識となり得る日が来るかも知れない。
そんな希望を持ちながら彼には突き進んで欲しいなぁと思います。


あとはきっと更科千鶴という存在が、修一や高槻よしのにとっても大きくなるのでしょうけど、まぁその辺についてはこれからさらに深く語られるていく部分だと思うので、今はあまり触れないでおこうと思います。ただ彼らにとって彼女が凄く輝いて見えているということは間違いないのでしょうね。


 放浪息子1話 シーン4


幻想と失望の差、彼はその自分らしさを貫けるのか―


ただそんな初回の話の中で一つ疑問も持ちました。
それは “彼は彼自身が思っている自分らしさというものを今後も貫いていけるのか?” ということ。

この疑問は、彼の考える女の子と男の子の構成についての台詞から生じてきました。

前者は 『お砂糖とスパイスと、素敵な何もかも―』
後者は 『カエルにカタツムリに子犬の尻尾―』

明らかなこの構成の差は、彼が女の子に対してとてつもない希望と幻想を抱いていて
逆に男の子(自分)に対しては酷い幻滅と失望を抱いているということが読み取れる
と思います。

彼がこう考えてしまうのも無理はありません。だって彼は今、女の子になりたいんですから。
でもそれはあくまで幻想でしかないんですよね。
女の子になり切って、街中を巡り巡って色々なことを新しい目線で見たところで
それだけでは女の子の全てを計り知ることは出来ないわけですから。
逆に男の子として生きてきた彼は男の部分の色々なことを知っているわけで、だからこそあれだけ嫌悪感を抱いているわけなんです。男の子ってそんないいもんじゃないよって。

でもこれって凄く危険な考え方だと思うんですよね。

だってそれは同じような境遇の女の子の側からしてみたら真逆な可能性もあるわけですから。
女の子だって、女なんてそんないいもんじゃないって思ってるかも知れない。

そう考えた時に一番大事になってくるのが高槻よしのという存在なんでしょうね、きっと。
修一とは似ているようで全く逆の立場の彼女が、男の子に対してどう思っているのか?
また女の子に対してはどう思っているのか?

その辺りはこのストーリーが進むに連れて凄く大切な部分だと思うし
私自身凄く気になるところでもあります。

そして何より修一が “女の子もそんないいもんじゃない” ということを仮に知ってしまって
彼の果てしない幻想と希望を傷つけられてしまった時、どう考えるのか。
そうなってしまってもまだ女の子でいたいと自分らしさを貫けるのかどうか。

その辺りの彼の気持ちの変化、考え方の変化、さらに言えば構成の変化というところについては
今後話が展開していく中でも凄く注目していきたいところです。


 放浪息子1話 シーン5
 放浪息子1話 シーン6放浪息子1話 シーン7


細かな演出が語るこの作品のテーマについて―


最後にこの作品において見られる細かで繊細な演出について少し思ったことを。

個人的に一番印象深かったのは、千葉さおりが男子生徒を殴った時に用いた本が『赤毛のアン』 だったことです。大事なのは性別などではなく中身の人間性であるということを謳っている作品ですが、この主題というのは、そのままこの 「放浪息子」 という作品においても当て嵌めることが出来るのではと思います。そう考えると、この演出自体がむしろそういうことを表現するために組み込まれたものだとも解釈することが出来るかも知れません。

また四葉のクローバーというのは願いを叶えるための象徴とも呼べる存在です。そしてこの四葉自体はピン留めも含め二度の登場シーンがあったわけですが、そのどちらのシーンにおいてもその時の主人公の性別が女の子に変わっているんですよね。これがどういうことを指しているのか深くは考えないことにしますけど、何だか夢のある温かい演出だなぁと思えてきてしまいます。

さらには終盤であったあのエビフライの演出。まず注目したいのはそのエビフライの配置なんですが、三つのエビフライが身を寄せ合い、残り一つのエビフライが逆を向いているようにも見えてきます。そう考えた時に思うのは、やはりこの端のエビフライは修一を表しているのではないかということです。家族の中で一人だけちょっと違う感性を持っていて方向性が違うということの暗示。それでも乗っているお皿は同じであって、そんな彼も同じ普通の人間なんだよということの訴え。

また 「エビフライはカラッとしてて、尻尾まで食べられた」 という表現からは、修一があんなことを姉に言われても姉のことを嫌っていない、むしろ好きなんだということが読み取れるのかなと思います。嫌いな人にもらったものが美味しく感じるわけないですからね。しかも尻尾まで食べるなんてよっぽどでしょうから。


こういったようなことを考えているとこのアニメの方向性みたいなものや
制作側がどういう思いでこの作品を描いているのかということが
段々と見えてくる気がしてきます。人の温かさや優しさ、辛さ。人の願い。

もしかしたら人生観を変えてくれるかも知れないとさえ、この作品には感じることが出来ましたね。

それだけ私にとっても、この作品に期待しているところは大きいんです。
もちろんまだ初回を見ただけですし、今後色々と印象や期待感という部分は変化するかも知れません。
それでもそれがこのアニメを視聴し終わっての今の率直な気持ちなんです。

当分はこの期待感を持って、真摯にこの作品と向き合いたい。そう思います。



少し長くなってしまいましたね。ここまで読んで下さった皆さん本当にありがとうございました。
自分にもっと物書きの力があればもっと簡潔にできたのかも知れませんが
今の自分にはこれが精一杯といった感じですね・・・(汗)

でも自分なりに感じたことは全て書き込んだつもりです。その気持ちが少しでも一欠けらでも伝わってくれればいいなぁと今は思っています。ではまた、2話の感想にて。




次回  「きらい きらい 大きらい ~Cry baby cry~



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